一般社団法人 日本空気と水の衛生推進機構の設立について
設立趣旨
今般、人々を取り巻く「空気と水」に係る環境改善等への取り組みを通じ、安心・安全な活動空間の確保を実現することでその心身の健康増進に寄与するとともに、経済活動の生産性向上による共通価値創造の推進を図り、もって健全かつ持続可能な社会の構築に貢献することを目的として、一般社団法人日本空気と水の衛生推進機構を設立することとなった。
いまや世界で最も顕著な少子高齢社会となった現在のわが国を取り巻く情勢に鑑みれば、経済活動の生産性向上による共通価値創造の推進は、健全かつ持続可能な社会の構築にとって欠くべからざる要件といえよう。
昨今、わが国の産業界においては、デジタルトランスフォーメーション等による生産性向上への取り組みが加速し、一定の成果をあげている。もっとも、産業界の根底には日々の経済活動を支える働く人々の存在があり、彼ら(彼女ら)は生身の人間であるため、将来にわたり安心・安全な活動空間(すなわち産業界においては労働環境)を確保していくことが、極めて重要な課題となっている。
具体的には、適切な労働衛生管理、とりわけ、最も基礎的な条件である「空気と水」を中心とした環境改善をより高度に実現することにより、働く人々のリスクを最小化するとともに、人間らしい雇用環境を促進し、さらには快適な職場を実現することが重要と考えられる。経済活動が多様化した現代においては、空気や水の衛生管理の課題も多岐にわたっており、状況に応じた木目細かな対応が常に求められる。
例えば、2019 年末に始まった新型コロナウイルスによるパンデミックを契機に、住宅、オフィス、商業施設、医療機関等の室内の空気環境管理の重要性が急浮上し、以降、環境衛生の専門家と一般企業・諸団体の間では、労働現場の空気環境の検証と改善を企図した自発的な取り組みが活発化した。専門家たちは、各自が有する知見を学会等を通して共有し、多様な現場経験や換気に代わる空気環境改善策等が広範囲に活用可能となっていった。その一例として、一般的に室内の空気環境改善に有効とされる窓開け換気について、個別事情により実施困難なケース(外気を取り入れる事による温度変化や黄砂・花粉流入の問題を惹起する等)も少なくないといった知見も共有されている。
さらに 2022 年頃になると、専門家による検討や相互の連携はさらに進化しその課題の対象が一般の室内にとどまらず労働環境にも広がりを見せ、より専門性の高い空気環境改善手法も検討された。その成果の一つとして、溶接現場における溶接ヒュームの個人ばく露リスクを高性能空気清浄機により低減する新手法が生まれ、日本産業衛生学会で発表され新概念として認知された。また、衛生管理のターゲットは空気環境に限定されるものではなく、類似の活動を通じ水に関する環境改善への取り組みも進展しつつある。
こうした科学的知見に裏付けられた専門家による成果は、いちはやく企業等の生産現場に導入され、経済活動の生産性向上に着実に繋げていくことが望ましい。しかしながら、従来より、学会を中心に活動する専門家と企業経営者・実務者との間では、特に衛生管理の課題等についてのコミュニケーションに関して少なからず課題があり、連携・協働の緊密化が求められる状況にあった。この間、官公庁による上述のような連携・協働に対する理解や支援体制にもなお改善余地があったことも事実であろう。これらの諸課題が解決されることにより、産業界は、衛生環境の改善を契機に生産性を飛躍的に高められると期待される。
以上のような現状に鑑み、新法人を設立し多様な知見を有する専門家、産業界、官公庁等を糾合して活動に取り組むことによって、わが国における「空気と水」に係る環境改善等が促進されるとともに、その成果が余すところなく産業界で利活用されること等を通じ、安心・安全・快適な活動空間が確保され、わが国産業界における経済活動の生産性向上に繋がることを確信する。そして、ひいてはこれらが健全かつ持続可能な社会の構築に資することを強く願うものである。
主な活動内容
- 人々が活動する空間の「空気と水」に係る調査・研究
- 「空気と水」の衛生及び健康増進等に係る普及・啓発
- 経済活動の生産性向上による共通価値創造の推進
- 有識者・研究者や官公庁、企業・団体等との連携および協働
- 「空気と水」の衛生推進に係る各種の取り組み等に対する助成
- 前各号に関連する情報発信
- その他の前各号に関連または付随する事項