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アーカイブ004 高鳥浩介先生

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JAWHOセミナー「見えないカビの恐怖!住まいと健康を守るための最新カビ対策セミナー」での高鳥浩介先生(NPO法人カビ相談センター理事長)のご講演の要約を掲載いたします。

カビの正体と情報・報道の誤解

カビ対策の要点:ホコリとの関係性に着目した予防管理

カビは、衛生的で快適な生活環境を維持する上で、多くの人々が直面する課題の一つです。市販されている対策製品は多数存在しますが、その効果を最大限に引き出すには、カビの生態的特徴を科学的に理解することが不可欠です。

本稿では、専門家の講演内容に基づき、効果的なカビ予防策を解説します。特に、これまであまり注目されてこなかったホコリとカビの密接な関係性について、詳しくご説明しています。

カビの発生・増殖の基本条件

カビがその生育を開始し、増殖するためには、主に以下の4つの条件が必要となります。

  1. 温度: 20~30℃の範囲(人間が快適と感じる温度域と重なります)
  2. 湿度: 相対湿度70%以上で活発化し、60%を超える環境から注意を要します
  3. 栄養分: 食品や建材のほか、ホコリが主要な栄養源となります
  4. 空気(酸素): 人間と同様に、生育には酸素を必要とします

これらの条件が満たされた環境下で、空気中を浮遊するカビの胞子は物質の表面に付着し、発芽・増殖に至ります。

カビ対策における重要事項:ホコリとの関係性

カビ対策を講じる上で、最も重要視すべきは「ホコリとカビは一体である」という知見です。

我々が日常的に目にするホコリには、常にカビが生きた状態で付着しています。空気中の浮遊カビ胞子数は季節によって変動しますが、ホコリ内部に存在するカビの量は年間を通じてほぼ一定であり、恒常的な発生源となり得ます。

特筆すべきは、その強い生命力です。多くの細菌が乾燥環境下では短期間で死滅するのに対し、カビはホコリという保護された環境下で、数ヶ月以上にわたり生存し続けることが確認されています。

科学的知見に基づく効果的なカビ予防策

以上の生態的特徴を踏まえ、専門家は以下の予防策を推奨しています。

  1. 「事後処理」ではなく「予防管理」の徹底
    カビが発生した後の除去(事後処理)には多大な労力を要します。したがって、カビが生育できない環境を維持する「予防管理」が、対策の基本原則となります。
  2. 局所的な高湿度環境の是正
    室内の湿度管理において、部屋の中心部の数値のみを指標とすることは十分ではありません。空気の対流が起こりにくい室内の隅、家具の背面、収納内部といった「局所的な高湿度環境」の存在を認識し、その改善を図ることが肝要です。
  3. ホコリの除去と管理
    「ホコリとカビの一体性」を考慮すれば、ホコリの適切な除去と管理が、極めて合理的なカビ予防策であることは明白です。定期的な清掃により、カビの栄養源と生育基盤を排除することが重要となります。