【研究の背景と目的】
本研究は、災害時の避難所の空気環境の現状を明らかにし、特に感染症予防のための具体的な対策を提言するものです。
2025年12月の最新の報道によれば、能登半島地震の犠牲者のうち災害関連死は計470人で、建物倒壊などによる「直接死」の2倍超となっており、災害関連死対策が大きな課題としてクローズアップされています。災害関連死の原因は、「心血管疾患」と「呼吸器疾患」が共に約30%を占めており、避難所でCOVID-19やインフルエンザの集団感染が再三報告されたことも踏まえると、避難所の空気質の悪化が感染性エアロゾル濃度の上昇を招き、災害関連疾患のリスクを高めた可能性があります。現在、特に災害発生直後の「TKB48(※)」を目指す防災対策が多方面で検討されていますが、一方で、発災後、長い場合は数ヶ月以上続く避難所生活の環境の整備・改善は、災害関連死防止のために重要な課題です。
本研究では、能登半島の避難所において室内の空気質の現状を二酸化炭素濃度を指標として評価し、問題点を明らかにするとともに、問題解決の手段として空気清浄機に着目し、これによる空気環境の改善効果を検証することを目的としました。
この研究は、日本空気と水の衛生推進機構と、金沢大学、北里大学の協力の下に行われました。
※ T(トイレ)、K(キッチン=食事)、B(ベッド)の3つを48時間以内に整備すること
【論文情報】
〈掲載誌〉
日本予防医学会雑誌
〈英文タイトル〉
Assessment of the air quality in evacuation shelters after the 2024 Noto Peninsula Earthquake in Japan and the implementation of mitigation measures using air purifiers
↑原著英文へのリンク
〈和文タイトル〉
能登半島地震後の避難所における空気質の調査と空気清浄機を用いた改善対策
↑和訳全文へのリンク
〈著者〉
名前:橋本晴男1、2)、武藤剛3) 、弘田量二3) 、辻口博聖4) 、原章規4) 、中村裕之4)
所属:1) 一般社団法人日本空気と水の衛生推進機構、2) 橋本安全衛生コンサルタント合同会社、3) 北里大学医学部衛生学、4) 金沢大学医薬保健研究城医学系衛生学・公衆衛生学
〈論文の主な内容と結論〉
2024年1月に発生した能登半島地震により、多くの避難者が公民館などの避難施設に長期の滞在(数ヶ月に及ぶ場合もあり)を余儀なくされた。避難施設内の環境条件は避難者の健康に重大な影響を及ぼし、災害関連疾患や死亡リスクを高める可能性があり、特に感染性エアロゾルの濃度上昇の原因となる可能性がある。
本研究では、能登の2か所の避難所の10室において室内の空気質を評価し、対策の有効性を検証した。評価にあたっては、空気質の指標として二酸化炭素(CO₂)濃度を用い,1500 ppm以下を許容可能なレベルとして設定した。換気装置が稼働している間は、避難室内の空気質は概ね良好であった。しかし、夜間など寒冷や騒音を避けるために換気が停止されると、空気質は著しく低下した。
ここで、各避難室にその在室者数に応じた数のポータブル型空気清浄機を設置することにより、室内の環境が大幅に改善した。また、空気清浄機による空気の清浄化効果を実際の避難室で実証できた。
以上から、空気清浄機は避難所の室内の空気質を向上させる効果的な対策となり得ると考えられた。特に、発災後に空気清浄機を避難所に搬送することは一般に困難なことから、避難所として指定された公共施設に平時から空気清浄機を設置し日常用に利用しておき、発災時にこれらを実際に避難室となった部屋の空気環境改善に活用することが、有力な防災戦略となると考えられた。